「この器には“手間暇”の一言では足りないほどの、技術と情熱が込められています。」<前編>
皆さんは、有田焼の器がどのようにして出来上がるのか、ご存じですか?
有田焼の製造は、原料である陶石が器になるまでの各工程を、それぞれ専門の職人が担っています。
この分業体制は江戸時代から続くもので、職人の伝統・技術は今も大切に継承されています。
「この器が手元に届くまでに、いったい何人もの職人さんの手を渡り、どのくらいの時間をかけてきたのか?」
知りたい!と思ってくださった方のために、少しずつお話しします。
かくいう私も、有田焼の製造工程を学んだのは、つい先日のこと。
「お客様に器選びをアドバイスする上で、もっと説得力のある材料が欲しい」
「有田焼が出来るまでの工程を、一度見学してみたい」
その願いを叶えるべく、いつもお世話になっている窯元さんにお伺いを立てたところ、
有田でも有数の窯元である【田清窯】さんが、快く引き受けてくださいました。
普段は立ち入れない工場内の見学ができるなんて、大変ありがたいことです!!
早速、案内していただきました。
↑素焼きの窯の様子↑
田清窯さんでは、外注した生地を自社窯で素焼きする工程から始まります。
素焼きの窯の温度は890℃、8時間かけて焼いていきます。
素焼きすることで、強度が増して扱いやすくなり、また吸水性も増すことで、
後の工程の下絵付けがしやすくなるそうです。
↑素焼き後の生地を検品↑
素焼き後の生地を、ひとつひとつ手に取って検品されています。
この時生地の表面についた粉を払いながら、サンドペーパーで縁を滑らかに整えます。
このひと手間により、釉薬もきれいにのり、鉄粉の付着やピンホールを防ぐそうです。
(画像の商品は、絶大な人気の「結び」のお皿ですね!線が描かれる前も美しい!)
↑伝統工芸士さんの下絵付け↑
素焼きした焼き物に、絵薬(顔料)で柄の輪郭取りや線描きをします。
細めの筆を使って、繊細なタッチで、スピーディーに描かれています。
線描きは、筆のほかにもゴム版や転写紙も用いられます。
線描きしたら、次は太い筆で呉須(ゴス)を塗ります。
(下絵付けの技法で「濃(だみ)」といいます。)
濃に使う大きな筆は顔料を多く含ませる事ができ、指先の力加減で濃淡をつけています。
(残念ながら、この日は濃の様子が見れませんでした。)
↑染付の呉須の色を比較↑
焼く前の呉須の色は茶色?黄土色?に見えます。全然違いますね!
下絵付けができたら、いよいよ釉薬をかけます。
釉薬をかけることで、焼いた後の器は透明なガラスのような光沢が出て、手触りもツルツルになります。また、吸水性が上がった素焼きの時とは逆に、耐水性が上がり、日常使いが出来る仕様になります。
釉薬にもたくさんの種類があり、調合の違いで色が変化します。
色釉薬をのせない部分には、ゴムを巻いて薬の浸透を防ぎます。
↑施釉後の検品↑
ゴムをはがしながら、釉薬のムラがないか等、ここでもひとつひとつ検品されています。
本窯に入る前の、入念な作業です。
ひとつの色を付けて乾かしてから、次の色を付けるので、染付の色をたくさん使った商品は、その分手間と時間がかかっています。
↑皿板の上で窯入りを待つ器たち↑
器が乾燥したら、ついに本窯へ入ります。
窯の前で、隙間なく積まれた器の様子は圧巻でした!
この様子は次回の記事「この器には“手間暇”の一言では足りないくらいの、技術と情熱が込められています。」<後編>でお話しいたします(^^)
▼【田清窯】さんの公式ホームページはこちらからご覧ください▼
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